本特集は、朝日新聞社メディアビジネス局による特集からの転用・転載です。

2020.10.30

【朝日新聞デジタル特集3】
アフターコロナに向けた、未来を守る分散投資の考え方と実物資産の活用

不動産投資

資産運用

※掲載の情報は2020年10月30日時点のものです

Vol.2では「社会は変わった。経営者も変わるべきか?」と題し、オーナーの視点からコロナ後の企業、そして個人はどうあるべきかを考えていった。今回は、大規模な財政出動と新しい生活様式によりコロナ危機からの復興に向けて社会が歩み始めた現在、富裕層に求められることは何か考えてみる。

前半は、財政支出の拡大によって懸念されるインフレや増税の不安を踏まえて考えるべきことは何か、UBS証券株式会社 ウェルス・マネジメント本部 チーフ・インベストメント・オフィス(CIO)日本地域最高投資責任者兼日本経済担当チーフエコノミストの青木大樹氏に聞く。

経済が回復しても全てが元には戻らない

——コロナの収束はまだ見えず、経済には力強さが戻っていません。一方で日本では内閣が変わり、間もなく米国大統領選挙も予定されています。この先の経済の見通しを青木さんはどうお考えですか。

近ごろは、GDPがコロナショック以前の水準に戻るのはいつかというご質問をよくいただきますが、私たちはその時期をアメリカで2022年、日本では2023年と予測しています。もちろん今後の感染の広がり次第ではもっと遅れることもあり得ますが、中長期的に見ればいずれ以前と同様の規模まで回復していくでしょう。

ただしGDPの数字は戻っても、全ての経済活動が完全に元通りになることはないと考えています。コロナショックの後だからこそ伸びる分野がある一方で、取り残されていく企業や産業もある。これはそういう変化です。

日本を含む多くの先進国では、コロナショック以前から成長のスピードは鈍化していました。産業の中心が製造業からサービス業へと移行し、社会の高齢化も進んでいるので致し方ない面もありますが、今後はこうした傾向にさらに拍車がかかっていくでしょう。格差が徐々に広がり、みんなで成長していくという絵が描きにくい時代です。

——旅行や観光業など非常に厳しい分野はあるものの、社会にそこまでパニックが広がっていないのは、国が巨額の財政支出で支えていることが大きな理由だと思います。一方でそれが近い将来インフレを引き起こすことにつながらないでしょうか。

日本では1990年代以降、財政はずっと拡大傾向にあり、国の債務も増大し続けてきましたが、それ以上に稼ぐ力が民間企業にありました。しかし先ほど述べた高齢化や格差の拡大で社会は変化し、米中のデカップリングでグローバル経済の枠組みも変わろうとしています。

もしもこの先、日本経済が低迷したまま企業の稼ぐ力も低下し、財政支出だけが増え続けるとどうなるか。国内で借金をまかなえなくなれば、国債など日本の資産を外国に買ってもらうしかありません。中央銀行が買い続ければ良いという議論もありますが、民間に稼ぐ力がなければ新興国のように供給された資金は流出します。そうなれば円の価値は下落し、インフレ圧力が強まっていくでしょう。コロナショックでそのリスクは無視できなくなったと考えています。また見方によっては、インフレはもう起こっているとも言えます。

足元でインフレはすでに起こっている

——どういうことでしょう。

日本がこれまで財政拡大・金融緩和路線を続けてきたのにインフレが起こっていないのは、1800兆円もの日本国民の個人金融資産がモノに向かわなかったからです。その大半は預貯金として金融機関にあり、金融機関を経由して国債に向かっていました。結果的に国債価格は上がり、金利は低く抑え込まれていたのがこれまでの状況です。アメリカでは現在、コロナ対策で市中に流れたお金の多くが株に向かい、幅広い分野で株価が上昇しています。国債や株などひとつのセクターに資金が集中し、相対的な通貨安が起こっている。ある意味でこれはインフレと言えます。

さらにこれだけ財政支出が続くと、増税の動きにも注意が必要です。日本社会では今後デジタル化が加速していくでしょうが、一方でそれは増税を容易にするという面もあります。たとえば数年にわたって毎年1%ずつ消費税を上げようとしても、これまでなら企業の事務負担が膨大になりすぎて実現できませんでした。しかしデジタル化が進めば、そのハードルが低くなる。モノに対するお金の価値が年々目減りしていくとすれば、これは強制的なインフレとも言えます。

——富裕層にとっては資産を守るために何をすべきか、ますます難しくなっていきそうです。

一般に、景気がいい時には株が買われ、景気が悪くなれば金利が下がり債券を買う動きが強まるという逆相関の関係があるため、これまでなら株と債券に分散することでリスクを平準化できました。しかし現在は株が上がり債券も上がり、金利は下がっているという状況です。仮にどこかで金利の引き上げが行われれば、債券価格は下がり投資を控える人が増えるため株価も下がる。全く逆の状況に一気に流れていく可能性もあります。

——vol.1において資産運用のキーワードとして分散投資が紹介されていました。今後も分散投資が基本ではあるものの、従来と同じ分散の考え方ではダメだということですか。

そうですね。通貨分散、時間分散といった資産運用における分散投資の観点は基本であり、今後も変わりありませんが、投資する資産の種類としてこれまでは伝統的資産(国内株・海外株/国内債券・海外債券)の中だけで分散を考えていても大きな問題はありませんでしたが、今後は不動産や金などの実物資産、あるいはヘッジファンドやプライベートエクイティファンドのようなものも含めた非伝統的資産の重要性がさらに高まっていくと考えられます。

日本で「ウェルス・マネジメント立国」を

——そうしたことを考える際には、何を指針にすればいいですか。

私たちUBSグループが運用の考え方として重視しているのが、「3L」というものです。最初のLは「Liquidity(流動性)」。目先の2、3年というスパンの中で、ビジネスや暮らしを問題なくまわしていけるだけの資金を確保しておくということです。そう考えると、基本的に運用規模を考える際には手元流動性を前提とするわけですが、加えて定期的なインカムをどう得るかという視点も重要になるでしょう。

二つ目のLは「Longevity(老後)」。日本では老後に2000万円から3000万円が必要だという話もありますが、老後資金としてどれだけ必要かということは一人ひとり違います。リタイア後の時間を自分らしく過ごすにはどのぐらいの余裕が必要か。この点では、老後までの長期の運用においては、インフレなどのリスクの可能性を考慮すれば安定的な資産も長期運用のポートフォリオに組み込むといった戦略が基本になります。

三つ目のLは「Legacy(承継)」です。上記ふたつの「L」をしっかり確保したなら、その後は将来の家族や次世代に対して何をするのか。この部分では、もしもご本人が望むならリスクをとった資産を組み入れてもいいでしょう。あるいは確実に子孫に残すことを最優先するなら、むしろ超長期の視点が必要かもしれません。

三つのLは一般の人にとっても大切ですが、富裕層には特にしっかり考えてほしいと思います。資金の余裕があるからこそ、あまり精査せずにリスクのある株を多く保有していたり、反対に安定的な国債や預貯金ばかりに偏っていたり、といったことがあり得るからです。それはあまり適切なやり方とは言えません。

——現在のように先の見通せない状況では、専門家に相談したいと考える人も多いと思います。

これは私の持論ですが、日本はこれから「ウェルス・マネジメント立国」を目指すべきであり、目指すことが可能だとも思っています。1800兆円の個人金融資産は日本の大きな強みですが、現状ではそれが預貯金に眠ったままで活用されていません。私たちの目的は、第一にお客様の資産を守り増やしていくことですが、それらの資産を成長に資するカテゴリーに投資することで目的を果たすと同時に、もっと日本経済の活性化に貢献できると考えています。言い換えれば日本には成長のポテンシャルがまだまだあるということです。

一方で日本のお客様は、収益の点から資産を売買することだけに関心があるのではなく、事業の継承と発展や、家族の将来を守ること、次世代に向けた教育なども重視する傾向があります。スイス・プライベートバンクの伝統を有するUBSと、日本に確かな基盤と信用を築いている三井住友信託銀行は、そうした総合的なアドバイザリーを提供する専門家集団ですので、日本の高いポテンシャルと私たちのサービスを組み合わせることで、あるべきウェルス・マネジメントのかたちをこの国で実現できると考えています。

——11月のセミナー(注)ではこうしたお話がさらに詳しく聞けるのですか。

そうですね。これからどこにアンテナを張り、どんなポリシーで投資を実践していくのか。お一人おひとりにそれを考えていただくきっかけになればと思います。

(注)文中のセミナーは2020年11月に実施し、既にご案内は終了しております。


続いて話を聞くのは三井住友信託銀行ウェルス・マネジメント部 上級主席財務コンサルタントの石井隆氏。インフレ懸念が高まる中での実物資産の価値、中でも不動産のメリットと活用例について、解説してもらった。

急に行動を変えず継続的な投資を

——今回のコロナショックを受けて、富裕層の意識に何か変化はありましたか。

資産構成が金融資産に極端に偏っていた方は、一時的に大きな痛手をこうむった可能性がありますし、反対に不動産や金などの実物資産に分散していた方は比較的影響も小さかったでしょう。「コロナだから」ということではなく、将来は何が起こるか分からないから分散しておくことが大切だ、という基本をあらためて教えられたのが今回の出来事ではないかと思います。

景気の後退はまだ続くだろうから投資は一切やめる、という方がいるかもしれませんが、預貯金だけに頼ることもインフレの可能性を考えるとリスクが大きい。今わかっていることは、この先も「何が起こるかわからない」ということだけです。2、3年もすればコロナの影響はすっかり収まり、経済が回復している可能性もありますが、何か他の大事件が起こっている可能性だってあるのですから。

——投資は続けたほうがいいということですね。

これまでも分散を考えた投資を実行していた方は、そのやり方を続けるのが良いだろうと思いますが、例えば株式でもひとつのセクターに偏っているような場合は見直すことをお勧めします。ただ、何かを急に変えたり、機敏に動こうとしすぎたりすることは、今は避けるべきではないでしょうか。

——冒頭に、実物資産を持つことがリスク回避に役立つという話がありましたが、目安として資産の何割ぐらいが実物だといいですか。

お客様の状況や考え方次第ですので一概には言えませんが、運用資産のうち、一般的には実物資産の保有割合目安は3分の1程度と言われています。そして他の3分の1は株など値動きのあるもの、残りの3分の1は預貯金や国債などの安定的資産に、というのが基本的な考え方です。

危機の中でも安定的な不動産の価値

——ただ不動産については、テレワークの定着で都心のオフィス需要が大きく変化しているという話もあります。不動産にはそうした価値変動のリスクもあるのではないでしょうか。

確かにテレワークの定着によって都市中心部のオフィス需要は下がっている一方で、だからこそ対面で会うことの価値も再認識されているのではないでしょうか。実はインターネット回線が普及し、デジタル化が進展し始めた頃にも、これでオフィスは不要になるという声はありました。しかし現実にはそんなことにはなっていません。テレワークが浸透したとしても、オフィスの必要面積が減ることはあっても、完全に要らなくなるという会社は少数だと思います。これは私見ですが、感染状況が落ち着いた頃には、一度移転した企業も都心に戻ってくるのではないでしょうか。

もちろん不動産にもボラティリティはあります。一方で、物件ごとの個別性も高いという特徴があり、良い不動産の価値は下がりづらいということができます。東日本大震災の際にも、立地や耐震性の高さでむしろ評価を上げた不動産もありました。今回のような危機を経ても、本当に良い物件は価値が下がっていませんし、不動産が安定的な資産であることはこの先も変わらないと思います。大事なことは、物件とその契約内容をしっかりと見る目を持つことです。

——富裕層にとって不動産を持つことにはどんなメリットがありますか。

私のお客様は企業オーナーが多いので、個人としての運用資産のひとつというだけでなく、相続と絡めて事業承継を円滑に進める手段として、不動産を活用することも考えられます。

業績好調な企業であれば自社株の評価額が上がるため、将来の相続税も上がります。その負担が大きくなり過ぎれば、事業承継そのものに支障をきたすこともあるでしょう。そこで資産管理会社で株式を保有しているような場合には、資産管理会社での不動産取得による相続税評価額の低減効果も考えて投資することが一般的です。

ただしやり方を間違うと、不動産保有の規模が大きくなり、長い目で見るとデメリットが拡大する恐れがあります。円滑な事業の承継が本来の目的だったはずなのに、不動産でリスクを取りすぎることは本末転倒になりかねません。

——そうした不動産の適切な活用手法は、一般の人にはなかなかわかりにくい部分ですね。

そうですね。たとえば株価が5%上がったという時、そこから得られるベネフィットは誰にとっても同じです。しかし不動産の場合は、相続対策なのか事業承継対策なのかといった目的によって、適した物件や契約内容、活用手法が大きく変わります。そうした点については我々に多くのノウハウと経験がありますので、ぜひご相談いただければと思います。

三井住友信託銀行は、銀行業務、資産運用・管理業務、不動産業務などを一体として展開する国内唯一の専業信託銀行グループですので、お客様の資産を「守る」ことについてはお役に立てることが少なくないはずです。ただ一方で、必要な部分はしっかり守ったうえで、面白みのある投資をしたいという方にとっては、我々の商品はやや物足りないところがあったのかもしれません。

グローバルな運用の視点と情報のネットワークを持つUBSとの連携によって、その部分が大いに強化されることになると考えています。我々がこれまで弱かった部分をUBSが補ってくれることで、お客様により満足していただけるご提案ができると考えています。

——11月のセミナー(注)も楽しみにしています。どんな内容になりそうですか。

私のパートでは、実物資産の一例として不動産を取得することのメリットから丁寧にお話ししていく予定です。きっとみなさんが思っておられる以上にメリットは大きいので、驚かれることがあるかもしれません。また企業オーナーにとっては資産管理会社を設立して不動産を持つというやり方もありますので、具体的な手法についても解説したいと思います。

(注)文中のセミナーは2020年11月に実施し、既にご案内は終了しております。

「攻めと守り」が融合したすごみ

スイスのプライベートバンクを源流とし、国際的なネットワークと情報収集力、グローバルな視点に基づく提案力に強みを持つUBSウェルス・マネジメント。日本国内に強固な基盤を持ち、顧客のニーズに即したきめ細かな提案で長年信頼を得てきた三井住友信託銀行。一見すると正反対のキャラクターに見える両者だが、相性はとてもいいようだ。

今回話を聞いた青木氏と石井氏はともに、自社の強みを生かして補い合うことで、より顧客に寄り添うサービスが提供できることへの期待を口にした。アフターコロナの時代には、この「攻めと守り」の連携こそが資産運用の「新しいノーマル」なのかもしれない。

本記事のより詳しい解説や具体的な事例などについては、セミナー(注)でお伝えいたします。ぜひご参加ください。

(注)文中のセミナーは2020年11月に実施し、既にご案内は終了しております。
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UBS証券株式会社は、UBS SuMi TRUSTウェルス・アドバイザリー株式会社の委託金融商品取引業者です。 UBSチーフ・インベストメント・オフィス(CIO)は、UBSウェルス・マネジメントの調査部門です。日本においてはUBS証券株式会社ウェルス・マネジメント本部の部門です。 UBS SuMi TRUST ウェルス・アドバイザリー株式会社はUBSグループ、三井住友信託銀行グループの戦略的提携によるマーケティング会社です。 本記事はUBS SuMi TRUST ウェルス・アドバイザリー株式会社が情報提供を目的として作成したものであり、特定の金融商品等の売買または売買に関する勧誘を意図したものではなく、金融商品取引法に基づいた開示資料ではありません。本記事は信頼できると判断した情報に基づき作成していますが、情報の正確性、完全性を保証するものではありません。 また、記載内容は過去の実績であり将来の成果を示唆・保証するものではありません。本記事の記載内容等は作成時点のものであり、今後変更されることがあります。 ※本ウェブサイト下部に記載の留意事項もご確認ください。

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